
中学女子の試合を観ていて、ジャンプシュートではなく、ドライブばかりして相手のボールになってしまう、そんな場面を、よく見かけます。
「なぜ、そこで止まって打たないんだ!」
「ディフェンスが3人もいるところに、なぜ突っ込んでいくの?」
ベンチから見ていて、このように頭を抱えた経験はありませんか?
フリーの状態でジャンプシュート(ストップシュート)を打てば簡単なのに、わざわざ狭いスペースへドライブし、ブロックされたりファンブルしてターンオーバーになったりする。
これは中学女子バスケにおいて、非常に多く見られる現象です。
選手たちも「ミスしたくてしている」わけではありません。
実は、彼女たちの中には「そうせざるを得ない理由」が存在します。
この記事では、レイアップばかりを狙って自滅してしまう原因を「技術」と「心理」の両面から分析し、適切な判断(デシジョンメイク)ができる選手に育てるための具体的な指導法を解説します。
1. なぜ彼女たちはジャンプシュートを打たないのか?
まず、選手が「打たない」のではなく「打てない(と思い込んでいる)」可能性を探る必要があります。
原因①:シュートの飛距離不足(ワンモーションの未習得)
女子中学生にとって、ドリブルからのストップジャンプシュートは、筋力的に難易度の高い技術です。
多くの選手は、セットシュートなら届いても、動きの中で止まって打つとボールがリングに届かない、あるいはフォームが崩れるという不安を持っています。
- 心理: 「外して怒られるくらいなら、確実に入りそうな(と錯覚している)ゴール下まで行こう」
この心理が、無謀なドライブを選択させます。
原因②:視野が確保できていない(ヘッドダウン)
ドライブを仕掛ける際、ボールを失わないように足元を見てしまい、顔が下がっているケースです。
顔が下がると「目の前のディフェンス」しか見えません。
その奥にカバーディフェンス(ヘルプ)がいることや、スペースが狭くなっていることに気づけないまま、アクセルを踏み続けてしまいます。
原因③:「レイアップ=正義」という思い込み
ミニバス時代やバスケ初心者の頃、「とにかくゴールへ向かえ」「レイアップが一番確率が高い」と教わることが多いです。
カテゴリーが上がり、ディフェンスのサイズや戦術レベルが上がっているにもかかわらず、アップデートできていない「成功体験の呪縛」が原因の場合があります。
2. 「突っ込み癖」を直すための技術的アプローチ
精神論で「周りを見ろ」と言うだけでは解決しません。
身体操作の観点から修正します。
解決策①:ストップ動作の徹底(パワーポジション)
突っ込んでしまう選手は、そもそも「急ブレーキ」がかけられません。
止まれないから、進むしかないのです。
- 練習ポイント: ドリブルから「1・2」のリズム(ストライドストップ)や、両足同時の「1」(ジャンプストップ)で、ビタッと止まる練習を繰り返します。
- 基準: 止まった瞬間に、誰かに押されてもグラつかない「パワーポジション」が取れているか確認してください。
解決策②:女子特有のシュートフォーム修正(ワンモーション)
ジャンプシュートといっても、男子のように最高到達点で打つ必要はありません。
女子選手に必要なのは、下半身の力をスムーズにボールに伝える「ワンモーション」のプルアップジャンパーです。
- 指導のコツ: 「高く跳んで打つ」のではなく、「止まった勢いをそのままボールに乗せる」イメージです。
- Deep(ディープ)の意識: 膝を深く曲げて止まることで、その反動を使って軽い力で遠くへ飛ばせるようになります。
これができれば、ペイントエリアの手前(フリースローライン付近)が「自分の射程圏内」という自信がつきます。
3. 「良い判断」を養う練習メニュー
状況判断(バスケIQ)を鍛えるためのドリルを紹介します。
ドリル①:エリア制限付き1on1
通常の1on1を行いますが、制限区域を設けます。
- ルール: 「制限区域(ペイントエリア)内でのシュートは禁止」。
- 目的: 強制的にペイントエリアの外で勝負せざるを得ない状況を作ります。
- ディフェンスを抜いた後、ゴール下まで行かずに、急ストップしてシュートを打つ感覚を養います。
- 慣れてきたら「ペイント内得点は1点、ペイント外(ジャンプシュート)は3点」と点数配分を変え、選手の判断を誘導します。
ドリル②:ドライブ・リアクション(信号機ドリル)
スピードに乗った状態から、ディフェンスの位置を見て「急ブレーキ(ストップ)」か「進行(ドライブ)」かを判断する練習です。
- 配置:
- オフェンスは3ポイントライン(トップや45度)からスタート。
- ディフェンスはゴール下(制限区域内)で待ち構えます。
- 動作:
- オフェンスはスピードをつけてドリブルでペイントエリアへ向かいます。
- フリースローライン付近に差し掛かる手前で、ディフェンスが動きます。
- 判断基準(正しいセオリー):
- パターンA:ディフェンスが「下がったまま(ゴール下を守る)」
- 解説:ゴール下が密集している状態です。ここに突っ込むと自滅します。
- 正解:急ストップしてジャンプシュート(ストップジャンパー)。
- パターンB:ディフェンスが「前に出てきた(プレッシャーをかけに来た)」
- 解説:相手が前に出てくる勢いを利用できます。
- 正解:スピードを緩めず、横を抜き去ってレイアップ。
- パターンA:ディフェンスが「下がったまま(ゴール下を守る)」
ポイント:
突っ込んでしまう選手は、パターンA(相手が引いている)の状況でもドライブをしてしまいます。
「相手が引いたら、そこは自分のシュートエリアだ」と認識させることが、この練習の最大の目的です。
ドリル③:ドリブル3回制限の3対3
1対1ではなく、あえて3対3(または4対4)のゲーム形式で行うことで、密集地帯(スペースのなさ)を認識させる練習です。
- 設定:
- 通常の3対3(ハーフコート)を行います。
- 特別ルール:
- ボールをもらってから、「ドリブルは1人最大3回まで」しかつけない。
- 3回ついたら、必ずシュートかパスをしなければならない。
- 狙いと効果:
- 「突っ込む」選手は、無意識に5回も6回もドリブルをして、自らスペースを狭めています。
- 回数制限があると、ゴール下まで強引に行く(突っ込む)ことが物理的にできなくなります。
- その結果、ドリブル1〜2回でズレを作ってからの「ストップ・ジャンプシュート」や、無理だと判断してからの「パスアウト」を選択せざるを得なくなり、自然と判断のスピードが上がります。
4. ミスを減らすための「考え方」とセルフチェック
技術や練習だけでなく、コートの中で「どう考えるか」を変えるだけで、プレーの質は劇的に変わります。
無謀なドライブをしてしまった時や、シュートを迷った時に、心の中で以下のセルフチェックを行ってみてください。
① 「突っ込んでミス」と「シュートを外す」は価値が違う
多くの選手は「シュートを外すこと」を過剰に怖がりますが、バスケットボールの理論では、この2つのミスには大きな差があります。
- 悪いミス: 密集地帯に突っ込んでボールを奪われる(ターンオーバー)。
相手の速攻につながり、失点する可能性が高い「最悪のミス」です。 - 良いミス: フリーでジャンプシュートを打って外れる。
これはオフェンスリバウンドのチャンスがあり、ディフェンスに戻る時間もある「次に繋がるミス」です。
「外したら怒られる」ではなく、「打たずに取られる方がチームに迷惑をかける」とマインドセットを変えましょう。
② 自分が攻めた後の「振り返り」を変える
プレーが切れた一瞬の間に、自分の中で正しい反省を行うことが成長の鍵です。
- × ダメな反省:
「あぁ、また止められた……私はダメだ」と落ち込むだけ。
これでは次はどうすればいいか分かりません。 - ○ 良い反省:
「今、ブロックされたのは近づきすぎたからだ。次は一歩手前で止まってみよう」
「ディフェンスが下がっていたのが見えた。次は迷わず打とう」
「なぜ失敗したのか」の理由が分かれば、次のプレーで修正できます。
③ 「ディフェンスが下がったらラッキー」と思う
ドライブが得意な選手ほど、ディフェンスは警戒して下がって守ります(サガリ)。
これを「攻めにくい」と感じるのではなく、「下がってくれた!フリーで打てる練習のチャンスだ!」とポジティブに捉えてください。
相手が下がっているなら、それは「打ってください」という招待状です。
遠慮なく練習してきたストップシュートを打ちましょう。
その判断こそが、ナイスプレーです。
5. まとめ:スペーシングの理解がチームを救う
無理なドライブをしてしまう選手は、バスケットボールにおける「スペーシング(空間)」の概念が希薄です。
自分が突っ込むことで、味方のスペースも潰し、ディフェンスを密集させてしまっていることに気づかせる必要があります。
- 止まる技術(ストップ)を身につける
- 楽に届くシュートフォーム(ワンモーション)を習得する
- 「引いて守られたら打つ」判断力をドリルで養う
この3段階を踏むことで、レイアップ一辺倒だった選手が、脅威となるミドルレンジのスコアラーへと成長します。
「止まって打てる」という選択肢を持つことは、結果的に本来得意であるドライブの威力を倍増させることにも繋がります。


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