「ボールをパスした後、どこに行けばいいかわからない」
「味方の邪魔をしてしまっている気がする」
「コートの中で棒立ちになってしまう」
中学女子バスケットボールの現場で、選手たちから最も多く聞かれるのがこうした「オフボール(ボールを持っていない時)の動き方」に関する悩みです。
顧問から「動け!」と言われても、具体的にどう動けばいいのかわからず、むやみに走り回って逆にスペースを潰してしまうことも少なくありません。

『動け!』って怒られるけど、動いたら動いたで『そこじゃない!』って言われる。私も中学の時、沢山言われました。
また、近年流行している「ピック&ロール(オンボールスクリーン)」は、中学生にとってはハンドリング技術や判断力が高度で、かえってミスが増える原因になることもあります。
そこで今回は、難しいスクリーンプレーを使わずに、「一瞬の2対1」を作る意識だけでオフェンスを劇的にスムーズにする方法を解説します。
バスケットボールは5対5ですが、局面で見れば「2対1」の連続です。
この基本をマスターすれば、迷いはなくなり、得点チャンスが驚くほど増えるはずです。
1. なぜ「5対5」ではなく「2対1」なのか?
まず、バスケットボールという競技の本質を理解しましょう。
コートには両チーム合わせて10人の選手がいますが、一度にボールに関与するのはごく一部です。
5人で一気に攻めようとすると、情報量が多すぎてパニックになります。
しかし、「自分とボールマン(ボールを持っている味方)だけで、目の前のディフェンス1人を攻略する」と考えれば、状況はシンプルになります。
数的有利(アウトナンバー)を意図的に作る
「2対1」とは、オフェンス2人に対してディフェンスが1人しか対応できない状況のことです。
これは速攻(ファストブレイク)だけの話ではありません。
ハーフコートのセットオフェンスの中でも、動き方一つでこの状況は作れます。
もしあなたがボールマンの近くで適切な動きをすれば、ディフェンスは以下の2つの選択を迫られます。
- ボールマンを守るか?
- 動いたあなたを守るか?
ディフェンスは1人で2人を同時に守ることはできません。
この「迷い」が生じた瞬間こそが、勝負を決める「一瞬の2対1」なのです。
2. 止まらずに動く基本「パス&ラン」の徹底
では、具体的にどう動けば「2対1」が作れるのでしょうか。
最も基本かつ最強の動きが「パス&ラン(ギブ&ゴー)」です。
「パスをしたらゴールへ走る」が基本ルール
動き方がわからない選手の多くは、パスを出した後にその場で止まって、パスの行方を見てしまいます。
これをやめるだけで景色が変わります。
- 味方にパスを出す。
- すぐにゴール方向(またはスペース)へ走る。
たったこれだけです。
パスを出した瞬間、あなたのマークマン(ディフェンス)は一瞬ボールを目で追います。
その瞬間にあなたがゴールへ走り込めば、マークマンはあなたを見失います。
この時、ボールマンから再びパスが返ってくれば、あなたはノーマークでレイアップシュートに行けます。
これが「2対1」の成功例です。
前を通るか、後ろを通るか
パス&ランでカッティング(走り込み)をする際、ディフェンスの立ち位置によってコースを変えます。
- ディフェンスが自分に近い場合:
ディフェンスの背中側(裏)を通ってゴールへ向かいます(バックドアカット)。 - ディフェンスが離れている場合:
ディフェンスの前を通ってボールをもらいに行きます。
どちらにせよ、パスを出した後に「止まらない」ことが、2対1を作るための第一歩です。

実は、難しいフェイクを入れるより、パスした瞬間に『ダッシュ』するほうが、ディフェンスは一番守りづらいです!
3. 味方との距離感「スペーシング」が命
2対1を作るために最も邪魔なもの、それは「他のディフェンス」です。
もしあなたがボールマンに近づきすぎると、あなたのマークマンもボールマンに近づくことになり、ボールマンは2人のディフェンスに囲まれてしまいます。
これでは「2対2」あるいは「1対2」の不利な状況です。
適切な距離は4〜5メートル
中学生女子にありがちなのが、不安だからといって味方に近づきすぎてしまうこと。
これを解消するために、常に味方とは4〜5メートル(パスが通りやすい距離かつ、ディフェンスが1人で2を守れない距離)を保つ意識を持ちましょう。
- 自分が動いてスペースを空ける
- 空いたスペースに味方が攻め込む
この繰り返しがバスケットボールです。
あなたがゴール下に切れ込んで(カットして)パスがもらえなかった場合、すぐにその場所から離れて反対側のコーナーやウイングへ抜けていくことが重要です。
あなたが居座るとスペースが埋まりますが、あなたが抜けることで、次にボールを持った味方が攻めるための「広いスペース」が生まれます。
これも立派な「動き方」の一つです。
4. 「ドリブル・アット」への反応(合わせの動き)
ピック&ロールを使わなくても、ボールマンがドリブルで仕掛けることで2対1は作れます。
特に効果的なのが、ボールマンがあなたに向かってドリブルをしてくる「ドリブル・アット」という状況です。
邪魔をせずに裏を突く
味方が自分の方へドリブルをしてきた時、多くの初心者はその場に止まっているか、ボールをもらおうと近づいてしまいます。
これはNGです。
場所が重なってしまい、ディフェンスが楽になります。
味方が自分に向かってドリブルしてきたら、それは「あなたのマークマンを利用したい」という合図、または「場所を空けてほしい」というサインです。
この時の正解の動きは2つです。
- バックドア(裏へのカッティング):
あなたのマークマンがボール(ドリブルしている味方)を気にした瞬間、ゴール方向へ鋭く走ります。
ボールマンはあなたにバウンドパスを出すだけで、簡単にレイアップのチャンスが生まれます。 - ハンドオフ(手渡しパス):
ボールマンのギリギリ横をすれ違うように走り、手渡しでパスを受け取ります。
これでディフェンスを混乱させることができます。
特に中学女子バスケでは、1の「バックドア」が非常に有効です。
ディフェンスはボールとマークマンの両方を視野に入れるのが難しいため、裏のスペースは常にチャンスの宝庫です。

味方がドリブルで近づいてきたら『どいて!』の合図。
怖がらずにゴール下へ走り込む勇気を持とう!
5. 三角形(トライアングル)を意識する
2対1を作る際、もう一人味方を加えた「3人」の関係性を意識すると、よりパスが回りやすくなります。
これをトライアングル・オフェンスの基本形と呼びます(難しい戦術用語ではなく、単に三角形を作るという意味です)。
ボールマンに対して2つのパスコースを作る
ボールを持っている味方に対して、常に2人がパスを受けられる位置に動くこと。
- 1人はゴールへ向かう動き(縦の動き)
- 1人はパスを中継する動き(横の動き)
このように三角形を作ることで、ディフェンスは的を絞りづらくなります。
自分がボールマンでもなく、カッティングする人でもない場合、「三角形の3点目」になる位置へ移動してください。
これが「ボールがない時の3人目の動き」です。
6. 実践!練習での意識ポイント
明日からの練習で意識すべきポイントを整理します。
コーチやチームメイトと共有してみてください。
① 声を出すのではなく「目」を見る
「ヘイ!パス!」と声を出すのも大切ですが、アイコンタクトが重要です。
ボールマンと目が合った瞬間が、動く(スタートを切る)タイミングです。
② ミート(ボールのもらい方)を強く
パスを受ける際、立ったまま受けるのではなく、ボールに向かって1歩踏み込む(ミートする)。
これにより、次の動作(シュート、パス、ドリブル)へ素早く移行でき、ディフェンスのズレを利用しやすくなります。
③ 失敗しても止まらない
もしカットしてパスが来なくても、失敗ではありません。
「ディフェンスを動かした」という成果があります。
パスが来なければ、すぐに抜けて次のスペースを作りましょう。
動き続けることがディフェンスへの最大のプレッシャーです。
7. まとめ:シンプル・イズ・ベスト
中学女子バスケットボールにおいて、動き方がわからない時に意識すべきは、複雑なフォーメーションではありません。
- パスを出したら走る(パス&ラン)
- 味方と重ならない距離を保つ(スペーシング)
- 味方が近づいてきたら裏へ抜ける(バックドア)
この3つを徹底し、コート上の局地的な「2対1」を何度も作る意識を持ってください。
ピック&ロールのような高度なスキルがなくても、足を使ってボールを動かせば、必ずノーマークは生まれます。
「自分が囮(おとり)になって味方をフリーにする」
「味方が囮になって自分をフリーにしてくれる」
この信頼関係が生まれた時、チームのオフェンスは止まることなく、流れるように得点へ結びつくでしょう。
まずは次回の練習で、「パスを出したら、リングへダッシュ!」から始めてみてください。
バスケットボールがもっと楽しく、もっとシンプルに感じられるはずです。


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